2010年 02月 08日
雪と焼酎
《雪見酒》
Dayton, OH USA

土曜の朝。遅く起きだして窓のカーテンを引いたとき、外を見てあっと思った。いつも見慣れているありふれた景色がすばらしい白色の世界に変わっている。きのうの夕方から降り続けた雪だった。週日の朝ならとっくに走っている除雪車も今朝はまだなく、表通りを行く車も皆無である。そうか、今日は久しぶりに中に閉じこもってのんびりと何かをしよう、と思う。コーヒーを飲みながら、わが Green Eyes が昨夜の残りのご飯で作るパンケーキを食べる。(僕はこれが好物なのだ) 彼女が「今日はこの雪で犬たちの散歩にも出れないし、私たちは運動不足にならないように、ふたりでドライブウエイの雪掻きでもしましょうよ」と言うのに僕は生返事をして二階に上がる。逃げ出したわけである。

二階のサンルームの窓の外の柳の木に、重い雪が被っている。精一杯に化粧をした麗人のように。それを眺めているうちに、「雪見酒」という言葉が浮かんできて酒を飲みたくなった。階下から焼酎の壜とぐい飲みを持ち込んでコートをしっかりと着込むと (サンルームにだけはヒーターが通っていない) 朝の十時ごろから飲みはじめた。紙のように薄く切られた生ハムにマヨネーズを添えて食べながら。そうだまずは写真を撮らなくちゃ、とカメラを持ち込んで目の前の麗人を撮りはじめた。壜に書かれた「水鏡無私」の字を見ているうちに昔の中国の賢人たちのことが思い浮かんでくる。「今、桃梨の芳園に会し天りんの楽事を序す」なんていって、桃の木や梨の木のもとに集(つど) って詩を作りあい、「佳作あらざれば罰は金谷の酒数によらむ」佳い詩ができなければ罰として酒を飲まされるのだ。なんという優雅!

焼酎の盃を重ねながら (寒いので)、麗人と対面しながら、僕の思いは次から次へと流れてゆく。
このぶんだと今日は雪掻きはできそうもない。


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# by september30 | 2010-02-08 01:08 | 過ぎて行くこと | Trackback | Comments(13)
2010年 02月 07日
酒場二題
《朝日の当たる酒場》
高知市


陽が落ちてあたりが暗くなり、妖しげな紅い灯があちこちに点き始めると、飲み屋街はとたんに息を吹き返したように生き生きとしてくるというのに、今この時間にはまだ街全体が眠っている。自転車に乗った新聞配達が時おり走っているだけである。
昨夜の嬌声や無節操をまるで恥じ入るかのように、この飲み屋は朝日を浴びてひっそりと眠っていた。

それはアメリカでも同じ。ただ日本と違ってこちらは昼前に開ける所が多い。ランチを出しているからである。仕事場のすぐそばにあったこのバーは、ウエイトレスの娘さんの誕生日に招ばれるくらい、僕はよく行った。十年以上も。
今はもうなくなってしまって、そのあとはインド料理のレストランになっている。


《昼下りの酒場》
Dayton, OH USA



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# by september30 | 2010-02-07 00:21 | 過ぎて行くこと | Trackback | Comments(0)
2010年 02月 05日
旅情
《パリの空の下・・・》


旅にもいろいろあって、友人家族を交えてのバカンスもあれば、夫婦で出かける気楽な旅や、特別な人との愛の逃避行もあるだろうし、独りで好きなことが何でもできる自由気ままな旅や、ビジネスの目的でどこかに行って帰ってくるだけの味気ない旅行もある。
こんないろいろな旅のパターンを僕はぜんぶ経験したわけだけれど、なんといっても一番強く印象に残るのは友人家族との楽しい旅行だった。これの良いところは、気心の知れた家族や親しい人たちとふだんはワイワイガヤガヤと行動を共にしながら、たまには独りになりたいと思うときには、わりと問題なくグループを離れて独りになれる、ということだろう。それからまた、永年つれ添った妻とのふたりだけの旅も、お互いに気を使うこともなく、行く先々でしみじみと思う存分に旅を楽しむことができる。こんな旅ならいつでも何度でもやってみたい。

それに比べると、単独で旅をするのは予定も計画もいらないし、ともかく気楽である。だけど気楽である代わりに、ものすごく寂しい。だから、自分自身の心の中をじっと見つめていろいろなことを考えたいときに、僕は独りで旅に出た。寂しさや悲しみのフィルターを通して見る異国の風景は、同じ風景でもある時はとても優しかったり、またなぜかよそよそしかったりする。「旅情」という言葉が心に沁みるのはそんな旅だった。

最後に、愛の逃避行。
これはとり巻く日常の現実からエスケープして、ふたりだけの世界にどっぷりと浸るための、なまなましい愛欲の旅だった。つかの間の逃避が終わったあと元の場所に帰ったときに、そこで対処しなければならないもろもろの問題を忘れようとして、まだそれほど確かではない男女の絆 (きずな) に取りすがる。その旅先で見る風景は、ふたりが演ずるステージの背景に配置された、薄っぺらな大道具の役割りしか果たさず、その舞台で演じられるふたりの人生劇は、たいていの場合悲劇としての結末しか待っていないようだった。

旅する先のローマでバルセロナでパリで東京で、愛し合う若いふたりを見るたびに、それが永遠に続くことをこころの底から願っている自分に気がつく。なぜなら、それが奇跡に近いということを、僕はもう知ってしまっているから。


恋人たちのパリ




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# by september30 | 2010-02-05 00:02 | 過ぎて行くこと | Trackback | Comments(12)
2010年 02月 03日
食べるということ
《エル・メゾン》
Dayton, OH USA


この極彩色の外観を持つ建物はメキシコでもスペインでも中南米でもなく、実は僕の住む町の、家からすぐの所にある地中海料理(そんな言葉があるのかな?)を食べさせるレストランである。僕らの大好物であるタパスを食べられるのは、この町ではここだけなのだ。昔のような大食漢ではなくなった僕は今では美味しいものを少し食べるだけで満足するので、スペイン料理のタパスや中華のディムサムなどは最適の料理だった。ヴェネツィアではたしかチッケッティと呼ばれていたが、これはどうもイタリアというよりはヴェネツィアだけの呼称のようである。日本料理屋に行ってもメインの料理のかわりに幾つものアペタイザーだけで十分ディナーになってしまう。
アメリカでは、どんな高級なレストランで食べてもあまった料理を容器に入れて持たせてくれるので、たとえ多めに料理を注文しても無駄をしたという感じがない。それを doggy bag と呼んで(うちの犬にあげる)という事にしてるのだけれど、何のことはない。自分たちが食べるのである。それにくらべると日本やヨーロッパではそんな習慣はないようだった。(ひょっとしたら保健衛生の観点から禁じられているのかもしれない)
だから僕らは数人で中華料理を食べに行くと皆が食べたいものをどんどん注文する、そしてさんざん食べたあと、あまりを別々に容器に入れてくれるのをそれぞれの好みによって分けて持って帰る。それはそのままあくる日のランチとか酒のつまみになるわけである。中華料理はその場で食べないと味が落ちる、ということもあまりないのでそんなことができるわけだ。

アメリカで今は鮨でも何でも大抵のものは食べられるようなったけれど、それでもふだんどうしてもお目にかかれず、たとえお目にかかれても美味しくはないので、日本に帰ると真っ先に食べたい、と夢にまで見るものの筆頭は、

餃子、ラーメン。お汁粉、とんかつ。

つまり日本でならどこの町のどこの横丁でも食べられそうだし、自分でも作れるものばかりだけど、どうしても美味しいものが作れない。


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# by september30 | 2010-02-03 01:04 | 過ぎて行くこと | Trackback | Comments(6)
2010年 01月 31日
いろいろなことが・・・
《曲線を拒否する風景》
Tokyo, Japan

このところいろいろなことが身辺で起こり始めている。決して今までが平穏無事の生活だった、というわけではないけれど、今年は変化や起伏の多い年になりそうな予感がする。何が先に待っているか分からないという不安感と、生活を変えて怠惰な日常からようやく抜け出せる楽しい興奮のようなものが、入り混じって僕の内部に浮き沈みする、何となく落ちつかない毎日になった。
一年以上続けたブログもこのところ更新が遅れがちで、読者の方たちには申し訳ない。でもこれだけは何としても続けるつもりです。


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# by september30 | 2010-01-31 23:50 | 過ぎて行くこと | Trackback | Comments(6)
2010年 01月 29日
一月のクイズの答えは・・・
あははは、今月のクイズは難しかったらしくて応募者の数が減少。その中で三人の方が正解でした。
この建物はラス・ヴェガスの有名な老舗のホテル、シーザースパレス(Caesar's Palace)でした。
僕としては文章の中のあちこちにヒントを散りばめたつもりで、このホテルを見たことのない人でもヒントから僕の以前のブログを思い出して、すこし時間をかけて探偵をすれば分かるようにしたつもりなんだけど・・・
僕の言うヒントというのは青色の部分です。

《それは豪華なホテルだった。広大なロビーの天井には一面にチフーリのガラス細工がちりばめてあって、それだけでもう別世界に来てしまったような不思議な感覚にさせられる。この町に来るのも三度目だけれど比較的新しいこのホテルは僕らには初めてだった。部屋に上がってすぐに目についたのはテーブルに置かれた大きなバスケットだった。ふんだんな果物やチーズといっしょにシャンペンのボトルが置いてあり、付けられたカードを読むと《ようこそ、眠りにつくことの無い不思議な世界へ。どうか素晴らしい滞在でありますように。》と書かれてあった。荷を運んできたベルボーイがカーテンを引いて窓を開ける。とたんに暖かいそよ風が室に吹き込んでくる。北向きのこの部屋から見ると道をはさんだすぐ向かい側には巨大な白い建物が見える。
「あの建物は何?」とベルボーイに尋ねると「あれは××××××××です」という返事が返ってきた。
そうか、あれが以前からいろんな映画に出てきた有名なホテル、かと納得する。ディナーまではまだじゅうぶんに時間があるので、わが Green Eyes と僕はシャワーと着替えにゆっくりと時間をとることができた。そのまえにとりあえず、この町に長く住んでいる友人に電話をする時間もある。》

つまり、まず場所がラス・ヴェガスで、僕らの滞在したのが新設のホテル、「べラジオ」だと分かった人なら、そのベラジオの北側にある建物というと、町の地図を見ればシーザースパレスしかないのだ。
ラス・ヴェガスは僕の以前の記事に何度か出てくるけれど、「ベラジオ」までいきなりゆきつくにはたぶんこの記事が一番早いかもしれない。

抽選の結果は中田久乃さんに決まりました。

中田さん、おめでとう。
住所氏名を非公開コメントにしてください。お好きな写真を指定する事を忘れないように・・・・
数日たって御返事の無い時は棄権とみなして次の方を選びます。



# by september30 | 2010-01-29 04:31 | 過ぎて行くこと | Trackback | Comments(5)


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